親知らずの移植とは?メリット・デメリットやよくある質問に歯科医師が回答!
- 2022.07.01
歯を失ったときは、
- ブリッジ
- 入れ歯
- インプラント
の3つの治療法を提案されるケースが多いです。
しかし、第4の治療の選択肢として「親知らずの移植=歯牙移植(しがいしょく)」も選べることをご存知でしょうか?
もし、
親知らずを移植するって何?メリット・デメリットは?
誰でもできるの?どこの歯医者でも選べる治療法?
などの”ハテナ”が頭に浮かんだ場合には、本記事を最後まで読んでいただくことで、疑問をスッキリ解消させられます。
具体的には、日本口腔外科学会・認定医が在籍する北戸田COCO歯科が、以下の内容を中心に解説していきます。
ぜひ参考にしてくださいね!
・親知らずの移植=歯牙移植(しがいしょく)とは?
・歯を失ったときに親知らずを移植するメリット
・歯を失ったときに親知らずを移植するデメリット
・親知らずの移植とよくある5つの質問
【執筆・監修者】田口 耕平
北戸田COCO歯科 院長
日本補綴歯科学会所属
日本接着歯学会所属
日本口腔インプラント学会所属
【詳しい経歴はこちら】
親知らずの移植=歯牙移植(しがいしょく)とは?
親知らずの移植=歯牙移植(しがいしょく)とは、
- 虫歯や歯周病で歯を失ったときに
- 噛み合わせと関係ない自分の歯(親知らずを含む)を
- 歯がない部分に移植する
治療法のことです。
正式名称は自家歯牙移植(じかしがいしょく)で、インプラントや入れ歯とは異なり、治療に人工歯ではなく自分の歯を使います。
歯牙再植(しがさいしょく)との違い
歯牙移植と歯牙再植という治療法は似た言葉ですが、以下のような違いがあります。
歯牙移植 | 歯牙再植 | |
---|---|---|
どんな治療法? | 歯を失った部位に、異なる部位の歯を埋め込む | 抜けた歯を、元の部位に埋め直す |
どんなときにする治療? | 虫歯や歯周病で失った歯を補うために | 外傷や事故で抜けた歯や治療で抜く必要ある歯を元に戻すために |
では次に、歯を失ったときに親知らずを移植する治療(歯牙移植)を選ぶメリット・デメリットを順番に紹介していきます。
歯を失ったときに親知らずを移植する4つのメリット
歯を失ったときに親知らずを移植するメリットは、以下の4つです。
- 歯根膜があるので食感を感じやすい
- 周囲の歯に負担をかけずに済む
- 一定条件を満たせば保険適用になる
- 移植後の歯も矯正治療で移動できる
それぞれどういうことか、お話していきますね!
①歯根膜があるので食感を感じやすい
歯を失ったときに親知らずを移植する最大のメリットは、「歯根膜がある」です。
歯根膜とは、歯の根っこの周りを覆っている”歯の靭帯”のようなもので、人工歯であるインプラントとの大きな違いを生み出しています。
インプラント(歯根膜なし) | 歯牙移植(歯根膜あり) | |
---|---|---|
埋め込む歯 | 人工歯 | 天然歯(自分の歯) |
食事の際の噛みごたえや歯ざわり | 伝わりにくい | 伝わりやすい |
歯に伝わる噛む力の調整力 | 少ない | 歯根膜がクッションとなって、噛む力を吸収・分散し、歯や骨にかかる負荷を和らげる |
そのため、歯を失った際により自分の歯に近い感覚の歯を入れたい場合には、歯根膜がある親知らず(噛み合わせと関係ない歯)を移植をしたほうが良いでしょう。
②周囲の歯に負担をかけずに済む
歯を失ったときに親知らずを移植する2つ目のメリットは、「周囲の歯に負担をかけずに済む」です。
ブリッジや入れ歯は、隣接した歯を支えに歯を失った部位を補います。
そのため、
- 噛んだときの負荷が隣接した健康な歯にかかったり
- 健康な歯の部分を削ったり
する必要があり、失った歯を補うために健康な歯の寿命を縮めてしまう欠点があるのです。
そのため、治療後にどんどん歯を失っていく結果に繋がりやすい治療法になっています。
一方でインプラントや歯牙移植は失う前の歯と同じように、土台となるあご骨にそのまま代わりになる歯を埋め込む治療法です。
つまり、失った歯を補うのに隣接した歯の力を借りなくて済みます。
そのため、歯を失った部位以外の健康な歯に負荷をかけずに、お口全体の歯の寿命を縮めずに済むのです。
③一定条件を満たせば保険適用になる
歯を失ったときに親知らずを移植する3つ目のメリットは、「一定条件を満たせば保険適用になる」です。
歯牙移植は、
- 移植する歯が「親知らず」または「埋伏歯(あご骨や歯茎に完全に埋まっている歯)」である
- 移植する部位に歯が残っている
の2つの条件を満たしていれば、3割負担の場合は約1万円前後で保険適用の治療を受けられます。
※費用はあくまでも目安です。診療内容によって異なる場合がございます。
ただし、保険適用内で歯牙移植をするためには「決められた治療法」「決められた材料」を使う必要があるなど、さまざまな制限がかかります。
例えば、上記2つの条件をみたす場合でも、
- 抜歯部分に骨を足したり
- 骨を削って、挿入部分を広くするなど加工したり
する必要があるケースでは、保険適応外になるため注意しなければなりません。
そのため、当院では保険適用の治療よりも「成功率を上げ」「確実な」歯牙移植を行うために、
- CT画像をもとに
- 3Dプリンターで移植歯のモデルを作り
- そのモデルをもとに移植する
手順をふんだ自費診療を中心に歯牙移植を行っております。(約20万円前後)
また、非常に難易度が高い治療法のため、万が一失敗したときのために、歯牙移植後にインプラント治療を行う際は差額にて対応できるようにしております。
気になる方は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね!
④移植後の歯も矯正治療で移動できる
歯を失ったときに親知らずを移植する4つ目のメリットは、「移植後の歯も矯正治療で移動できる」です。
歯牙移植は、治療後に移植した部位も含めて歯列矯正ができます。
なぜなら、歯牙移植をした歯には、歯を動かす際に重要な役割を果たす歯根膜があるからです。
一方で、インプラントには歯根膜がないため、矯正治療をしても埋め込んだ人工歯を動かすことはできません。
ただし、インプラントを入れる場合でもお口の中の状態によっては、
- インプラントを埋め込む前に歯列矯正をしたり
- インプラントを固定源にしたり
など、さまざまな方法で歯列矯正をして歯並びを整えられるケースも多いです。
では次に、歯を失ったときに親知らずを移植するデメリットを紹介していきます。
歯を失ったときに親知らずを移植する4つのデメリット
歯を失ったときに親知らずを移植するデメリットは、
- 治療難易度が高く、治療できる歯医者が限られる
- 40歳以上の場合は治療の成功率が下がる
- 虫歯のリスクが残る
- 適応条件が厳しい
の4つです。
一つひとつどういうことか、説明していきますね!
①治療難易度が高く、治療できる歯医者が限られる
歯を失ったときに親知らずを移植する1つ目のデメリットは、「治療難易度が高く、治療できる歯医者が限られる」です。
というのも、歯牙移植を成功させるためには、
- 歯根膜をできるだけ傷つけずに抜歯する外科技術
- 術後の感染を回避するための歯周病治療の知識や技術
- 外科手術が行える検査機器や設備が整った環境
などが必要で、治療の難易度はインプラントよりも高いと言われています。
つまり、メリットが多い治療法ではあるものの、実際に治療できる歯医者は限られているのが現状なのです。
そのため、当院では患者さまの治療の選択肢を増やせるように、歯牙移植にも対応できる
- 日本口腔外科学会・認定医による施術
- 三次元の画像診断が可能な検査機器
- 感染対策を徹底したオペ室
などの環境を整えております。
②40歳以上の場合は治療の成功率が下がる
歯を失ったときに親知らずを移植する2つ目のデメリットは、「40歳以上の場合は治療の成功率が下がる」になります。
なぜなら、歯牙移植は年齢が若ければ若いほど、
- 移植部位の状態が良く(歯周病に侵されてないなど)
- 移植後の治りも早い
などの影響で、40歳以下のほうが移植後の生存率が高いといった報告があるからです。
ただし、「歯牙移植は、○歳だからできない」といった年齢制限はありません。
年齢よりも、お口の中の状態を見て判断するケースが多いので、詳しくは担当医に直接相談するのがおすすめです。
③虫歯のリスクが残る
歯を失ったときに親知らずを移植する3つ目のデメリットは、「虫歯のリスクが残る」です。
歯を失ったときに選べる入れ歯やインプラントは、すべて人工の素材で作られているため治療後に虫歯になるリスクはありません。
一方で、歯牙移植は歯がない部分を天然歯(自分の歯)で補うため、移植した歯が虫歯になってしまうリスクは残るのです。
ただし、入れ歯やインプラントを入れても、他の健康な天然歯は虫歯リスクが残っています。
また、虫歯にはならなくても、歯周病が悪化するリスクはすべての治療法にあるのです。
そのため、お口全体の健康を考えると、
- 人工歯であっても
- 天然歯であっても
「歯医者の定期検診」「セルフケア」は必要になります。
そういった意味で、歯牙移植後に虫歯リスクが残るデメリットは過度に気にする必要はないでしょう。
④適応条件が厳しい
歯を失ったときに親知らずを移植する4つ目のデメリットは、「適応条件が厳しい」です。
親知らずの移植を成功させるためには、
- 歯根膜が十分にある
- 歯周病にかかっていない
- 移植する親知らずの根っこが湾曲していない
- 移植する親知らずの根っこが複数にわかれていない
- 移植する部位と歯や根っこのサイズが合っている
の適応条件を満たす必要があります。
もし、上記条件に該当しない場合には、『③一定条件を満たせば保険適用になる』でも説明しましたが、
- 抜歯部分に骨を足したり
- 骨を削って、挿入部分を広くする
などの施術が追加で必要なため、保険適用外の処置が必要です。
逆に言えば、インプラントは規格化されたサイズの中から移植部位に合う埋め込む歯をこちらで選べます。
そのため、歯牙移植よりも適応範囲が広いのです。
では次に、そんなメリット・デメリットがある親知らずの移植について、患者さまからよくある5つの質問にお答えしていきます!
親知らずの移植とよくある5つの質問
親知らずの移植についてよくある質問は、以下の5つです。
- 親知らずを移植した場合の寿命や生存率は?
- 親知らずを移植するタイミングは?
- 親知らずを移植したい場合の歯医者の選び方は?
- 他の治療法と親知らずの移植はどちらを選べば良い?
- 親知らずの移植で失敗やトラブルは起きない?
それぞれ、歯科医師視点で解説していきますね!
Q1:親知らずを移植した場合の寿命や生存率は?
A.移植歯の生存率(寿命)は、一般的に約5〜10年と言われています。
通常の天然歯のように、一生持つものではありません。
歯牙移植した歯の寿命を延ばすためには、他の歯と同じく定期的なメンテナンスを受けていただく必要があります。
Q2:親知らずを移植するタイミングは?
A.親知らずを移植するタイミングは、大きく分けて3つあります。
- 歯を抜いた直後
- 抜歯してから、2週間~1ヶ月以内
- かなり前に抜歯した場所への歯の移植
1番理想的なタイミングは、歯を抜いた直後です。
なぜなら、
- 抜いた穴の周囲に歯根膜が残っているため、術後の持ちが良くなる
- 移植後の歯が馴染みやすく、傷の治りが速い
- 周囲のあご骨が痩せていない
- 抜歯後の穴が残っているので、あご骨を削る量を最小限に抑えられる
などのメリットがあるからです。
ただし、お口の中の状態によっては、「①歯を抜いた直後」が適さないケースもあります。
詳しくは、担当医と相談した上で、タイミングを決めたほうが良いでしょう。
Q3:親知らずを移植したい場合の歯医者の選び方は?
A.外科処置に積極的に取り組んでいる歯医者がおすすめです。
具体的には、
- 日本口腔外科学会所属の歯科医師
- 日本口腔外インプラント学会所属の歯科医師
がいる歯医者で、
- 3DCT
- オペ室
などの設備が整っていると安心です。
また、歯医者の公式サイトなどで、歯牙移植についての記載があるかどうかを確認するのも良いでしょう。
Q4:他の治療法と親知らずの移植はどちらを選べば良い?
A.基本的には、適応条件を満たしているのであれば歯牙移植がおすすめになります。
なぜなら、歯牙移植は歯根膜があり、抜く前の歯と最も同じ感覚で使用できる歯だからです。
また、移植した歯がダメになっても、他の治療法(インプラントやブリッジ)を選ぶことはできますが、他の治療法を選んでから歯牙移植を選ぶのは難しいです。
お口の中の状況によって適した治療法が変わってくるケースもあるので、迷った場合にはぜひ口腔外科に精通した歯医者で相談をしてみてください!
Q5:親知らずの移植で失敗やトラブルは起きない?
A.一般的に、歯牙移植の成功率は約80~90%だと言われています。
ただし、外科手術である以上はリスクがゼロとはいえません。
また、
- 40歳以上の方
- あご骨が少ない
- 抜歯から時間が経過していて、歯根膜の細胞が少ない
- お口の清掃環境が悪い
などの場合は、成功率が下がることがあります。
そのため、当院では成功率を上げ、移植後の歯の寿命を延ばすために、
- CT画像をもとに
- 3Dプリンターで移植歯のモデルを作り
- そのモデルをもとに移植する
手順をふんだ自費診療を中心に歯牙移植を行っております。
必要であれば、歯周再生療法を併用し、あご骨を増やしたり歯根膜の働きをカバーする処置を行うケースもあります。
親知らずの移植の結論
それでは最後に、親知らずの移植について重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
親知らずの移植=歯牙移植(しがいしょく)とは、
・虫歯や歯周病で歯を失ったときに
・噛み合わせと関係ない自分の歯(親知らずを含む)を
・歯がない部分に移植する
治療法のことです。
歯を失ったときに親知らずを移植するメリットは、
①歯根膜があるので食感を感じやすい
②周囲の歯に負担をかけずに済む
③一定条件を満たせば保険適用になる
④移植後の歯も矯正治療で移動できる
の4つになります。
一方で、
①治療難易度が高く、治療できる歯医者が限られる
②40歳以上の場合は治療の成功率が下がる
③虫歯のリスクが残る
④適応条件が厳しい
といったデメリットもあるため、どの治療法を選ぶか迷った場合には、口腔外科に精通した歯医者で相談するのがおすすめです。
以上、今回は「親知らずの移植=歯牙移植」についてお話しました。
当院では、さまざまな選択肢の中から、患者さまに最も適した治療を選んでほしいという想いがあり、
- ブリッジ
- 入れ歯
- インプラント
- 歯牙移植
- 接着ブリッジ
といった5つの治療法をご用意しております。
それぞれメリット・デメリットがございますので、まずはお口の中を拝見した上でベストな治療法を提案させていただければ幸いです。
お悩みの際は、どうぞ遠慮なくご相談くださいませ^^
さいたま市・戸田市で治療をお考えなら北戸田COCO歯科へ